エイミーの麻酔科お勉強メモ

日々のお勉強のメモ

パーキンソン病患者の術前評価

◆疫学
・変性疾患としてはアルツハイマー秒の次に発症頻度が高い(有病率:約150人/10万人)
・50~65歳で発症し、高齢になるほど発症率は高くなる

◆病態生理
中脳黒質緻密層のドパミン作動性神経細胞の変性と脱落により、黒質線条体におけるドパミン放出の現象、ドパミン受容体刺激不全から、相対的にコリン作動性神経機能が亢進した状態。

◆術前チェック項目
・症状を確認する
・内服薬およびその副作用が出現していないか確認する
・嚥下困難、誤嚥、肺炎の既往はないか確認する(呼吸機能、喀痰排出能)

◆治療薬
<治療薬の種類>
・レボドパ製剤:ドパストン、ドパール、メネシット、マドパー
ドパミン受容体刺激薬:ビシフロール、レキップ
ドパミン遊離促進薬:シンメトレル
・MAO-B阻害薬:エフピー
・抗コリン薬:アーテンアキネトン
ノルアドレナリン作動薬:ドプス
・COMT阻害薬:コムタン

<副作用>
・不随意運動:ジスキネジア、ジストニア
・精神症状:幻覚、妄想、興奮、抑うつ
・On-off現象:服用時間に関係なく症状が改善/増悪する
・Wearing off現象:レボドパの効果時間によって症状が増悪する

<術前内服について>
・急激な内服中断は振戦、固縮の増悪、呼吸抑制、迷妄、悪性症候群を起こす可能性がある
L-ドーパの半減期は約4時間と短いため、麻酔開始直前まで内服を継続する
 (午後の手術なら可能であれば昼の内服分まで継続するなど)

◆麻酔について
<可能な限り避けたい麻酔薬>
・ドロレプタン:錐体外路症状が誘発されることがある
ケタミン、麻薬、亜酸化窒素:筋硬直が誘発されることがある
セレネース悪性症候群を起こす危険性がある
 ※術後呼吸抑制を起こす薬剤は最小限に

<区域麻酔の是非>
メリット
・嘔気・嘔吐、呼吸抑制、麻薬による筋硬直を避けられる
・抗パーキンソン病薬の中断をしないでよい

デメリット
・振戦、筋固縮のため体位がとりにくい

全身麻酔
・内因性のドパミンノルアドレナリンの現象などから難治性低血圧に陥りやすい
・麻薬は筋硬直を誘発する可能性に注意
・筋弛緩薬は筋弛緩モニターを用いて最小限にする
・喀痰排出能が低下しているため、抜管時は十分な覚醒と分泌物吸引を
・PONV対策はデキサメサゾンで(ドロレプタン、プリンペラン、ノバミンは錐体外路症状を悪化させる可能性がある)