エイミーの麻酔科お勉強メモ

日々のお勉強のメモ

糖尿病患者の術前評価

◆糖尿病タイプから注意すること

Ⅰ型 インスリン依存性。手術や感染のストレスでDKAに陥りやすく、
その管理はより一層の注意が必要。
脱水と絶食自体もリスクなので可能であれば朝一番の手術にするなど。
過去のDKA低血糖発作歴もチェックする。
Ⅱ型 どちらかというと合併する全身疾患に注意して管理する。
薬剤性 ステロイドなど。どちらかというと術後にインスリンが必要。
膵摘後 グルカゴン分泌も低下しているため、低血糖に注意が必要。


◆血糖コントロールについて
「血糖コントロール良好」とは、
血糖値120以下、HbA1c 8以下、尿中ケトン陰性、が一応の目安。

HbA1cは過去2ヶ月の血糖値を反映
HbA1cが6・・・血糖値が120くらい
HbA1cが7・・・血糖値が150くらい

HbA1c 7以上は術後感染が多い
HbA1c 8以上で網膜症や腎症が急増する
HbA1c 9以上では脱水の危険性が高い!延期で!
HbA1c 8以上、血糖値300以上なら相談を!

◆糖尿病と合併症
糖尿病の合併症の大枠は、微小循環障害と神経障害がある。

Silent ischemia
・無症候性の65-70%がⅡ型でコントロール良好な患者である(Am J Cardiol 2004; 93: 870-5)
・症状のないⅡ型DM(50-75歳)の22%で無症候性心筋虚血があった男性は女性の2.5倍多い(Diabetes Care 2004; 27: 1954-1961)
・POD2〜3が最も起こしやすい→術後モニタリングがいる場合も(ICU)
→Ⅱ型で50歳以上の男性は心電図をよくみる。心電図異常があるが冠動脈について精査されていないなら相談を。

胃不全麻痺
胃内容停滞は長期DMの50%(Diabetes Care 1999; 22: 503-7)
→胸やけや便秘の有無、すぐに満腹になるような症状がないか問診

交感神経/副交感神経障害
EpiやSpinalで上位の交感神経がブロックされると血圧の維持が出来なくなったり、体位変換や陽圧換気で血圧が急激に低下することもある。
→立ちくらみなどはないか問診

神経内分泌系の障害
刺激に反応してカテコラミンを分泌する能力の低下
→術中の心拍数の変化が乏しくなる
→安定した循環動態と錯覚しやすく、交感神経のストレス反応や循環動態の悪化をつかみ損ねる。

末梢神経障害
・Epi、Spinal、ブロックの前は特に症状を確認しておく。
・術中体位でも神経障害を受けやすい。
・TOFの装着部位にも注意する。

網膜症
・脳循環と網膜循環はその出所を同じにしているため、網膜症の有無を確認することは大事
(J Anesth 2010; 24: 748-756)
・網膜症の有無は脳循環における二酸化炭素応答性の指標にもなる
・網膜症があるDMは網膜症がないDMに比べ二酸化炭素応答性が低下している(Stroke 2003; 34: 2399-403)
HbA1cが高くなるほどCO2の脳血流量の反応性が低下する(J Anesth 2010; 24: 748-756)
二酸化炭素応答性が障害されると周術期脳虚血イベントや術後せん妄のリスクとなる。

エアウェイ
・メタボ
BMIに関係なくても、Cormack1、2のグループと3、4のグループに分けるとグレード3、4のグループでHbA1cが優位に高くなるという報告がある。(Anesth Analg 2008; 107)
・若年期発症のDMに注意→Stiff joint syndrome(頚・顎の関節のこわばり)